設えのアイディア

例えばこの写真。
「佃の改修」の十字型の引戸です。
こんな建具は一般的ではないけれど、廊下をとるのももったいない状況で生まれてきた設えのアイディアです。
こういうアイディアが出てくると、途端にこの十字建具を基準にものごとが決まっていったりします。
いろいろな寸法や素材や色だったり。
場合によっては、全体のプランも変わっていったりすることもあります。
一昨日のブログで佐野さんに紹介された耐力壁の小口面を棚にするアイディアなんかもその類いです。
そういった「設え」についてのアイディアが、平面や断面の骨格となるスケールのデザインと、ディテールスケールのデザインの中間に上手にはまった時に、厚みのある提案ができたなあ、という実感があります。
逆に、平面や断面のアイディアが強すぎると、それに縛られてディテールもそれに合ったものを選択し、ワンアイディアとトップダウンで細部まで統制されていきます。
しかし実際に出来上がると、なんとも決まり過ぎていて、予定調和というか、とりあえず窮屈な印象があります。
スペースが狭いという意味では無くて、居心地の悪い世の中になった感じ。
 
 
そう考えると、設えのアイディアは、パタン化されたデザインの美意識に、少しズラしみたいなものを作ってくれて、なんだか自由な気分な空間になる、のではないかと思うのです。
 
 
けれど、残念なことに狙って出てこない。
良くしよう、と考え続けて、もがいた先に、たまに、本当にたまに、ふっと出会える設えのアイディア。
 
 
また出会いたいので、考え続けます。
 
 
岡村航太