複数の建築家による各棟ごとにテーマを設定した分譲住宅計画。

テーマは「トラディショナル」「木の家」「モダン和風」「壁面緑化」など。

■全体計画

全体のマスタープランは緩く設定し、各棟担当の建築家がミーティングに計画案を持ち寄り、各案や棟どうしの関係について議論していき、全体としての街のあり方へとフィードバックしていく。

そのプロセスを繰り返すことにより実現した全体は、各テーマに対する回答としてだけではない、重層化されたアイデアが織り込まれた豊かな場所の連なりとなった。

個としてのアイデンティティを持ちながら、協力と議論の中から集合体的知性を持つ街並みとして。

ここでは、入居者達によるバーベキューなどのイベントが中央の広場で定期的に行われているという。

 

我々が担当したテーマは「モダン和風」。

位置指定道路の末端で旗竿敷地に建つこの建物では、公道から玄関へ至る過程の中で、空間の質が段階的に変化していく。

パブリックな空間から「向こう三軒両隣」的領域になり、プライベートな外部空間となり、最後に内部空間へ至る、というように。

この状況に対し、軒下の半外部的な場所を設け、また繊細なルーバーで建物を覆うことで、街に対して堅牢な断絶或いは悪戯な開放感を示すのではなく、空間の質の変化に合わせるような体験的な奥行き感,或いは街と住宅の緩やかな間合いが作り出すことを意図している。

内部では「土間」と名付けた玄関と2階のLDKとが立体的なワンルームとなり、玄関を空けると開放的な2階から光が導かれる。

これにより、アプローチと内部の構成が相まり、空間の広がりに序破急の変化が付けられていく。

このように、アプローチを含めた全体を広義的にひとつの家として捉えることが単なる「演出」としてだけではなく、住宅としての「価値」に付与する方法となればと考えている。

 

DATA

所在地 :東京都

主要用途:個人住宅

意匠設計:8d / ハッチョウボリ・デザイン・オフィス

工事種別:新築工事

竣工年月:2010.08